西ケープタウンの高等裁判所の判決によると、南アフリカにおけるAmazonの大規模建設プロジェクトが中止されるとのことだ。要因としては、現地の南アフリカの先住民の人々への適切な説明と相談がされていなかったことがある。
Amazonは以前にもニューヨーク市に本社を設置するという25億ドル(約2760億円)規模の計画を、政治的な反発を受けて断念した。
今回は南アフリカの先住民グループが「聖地であり、世界遺産に登録すべきだ」と主張する土地と川を巡り、対立が起こっている。約3億5000万ドルを出資して建設される「ザ・リバークラブ」という複合施設は、オフィスや住宅、ランニングやサイクリングのコース、約20エーカー(約8万平方メートル)の緑地公園などが含まれる。同地は20年以上前から、ケープタウンのシンボルであるテーブルマウンテンのふもとに9ホールのゴルフコースを備えた会員制クラブだった。それが現在、建築現場となっている。
アマゾンの創業者ジェフ・ベソスは2018年、南アフリカに拠点を作る宣言をしており、2020年には既にケープタウンの中心地にオフィスを構えていた。アフリカ大陸には住所が正確に決まっていない地域もあり、物流が困難である点、インフラが不十分である点、フードデリバリーなどが充実していない点が大陸の課題となっており、Amazonにとってアフリカ大陸における本社建設は存在感の大きいものになるだろう。
ところが、リバークラブの再開発を巡る論争が起こったことで、同社は再び守勢に立たされている。アマゾンはコメントを拒み、取材への回答は全て土地開発会社に委ねている。
ケープタウンにおけるビジネス予定地は先住民の「聖地」であり、Amazon地域本社を建設してはならないと述べているのは、アフリカ南部の先住民コイ族やサン族の一部や遺産保護団体、そして地元の市民団体などだ。
反対の理由として、区画整理が不正に行われた疑いや、環境への影響、無形遺産への配慮不足など、さまざまな問題が指摘されている。この建設地はオランダ東インド会社が現在のケープタウンに交易拠点を設置する前の1510年に、コイ族とポルトガル人が戦った場所に近いこともあり、彼らの所有地を外国に奪われてしまうことへの反発も強いのだろう。
今回、Amazon側は判決についてのコメントを求める電子メールの要請に応じなかった。
遺産と文化に対する先住民の権利と、Amazonのビジネス的価値は今後もアフリカにおけるビジネス進出を考える企業にとって重要な争点となるだろう。