提唱者「エマニュエル・ウォーラステイン」
エマニュエル・ウォーラステインは、アメリカの社会学者・経済史者で巨視的な観点から世界の歴史と社会全体を「単一のシステム」と捉える「世界システム論」を提唱・確立したことで知られています。
世界システム論とは
世界の歴史や社会全体を「単一のシステム」と捉える
世界史システム論とは、世界の歴史や社会全体を「単一のシステム」と捉えたものです。
これまで、歴史は時代や地域によって切り分けて考えてこられましたが、ウォーラステインは、世界中で起こる問題や時代を超えて起こる世界の動き方の特徴はある1つのシステムにまとめられると述べています。
地域や時代に関係なく、この世界システム論に従って、近代世界は動いているというのです。
「中核」「半周辺」「周辺」という3階層からなるグローバルな分業体制であり周辺は中核によって直接的・間接的な支配を受けるとともに、その自律的な発展が阻害される
世界システム論では、グローバルに役割が分業されており、その種類は3種類に分けることができます。
現代社会はひとつの構造体をなしていますが、それは長い16世紀に、西ヨーロッパを「中核」、東ヨーロッパとラテンアメリカを「周辺」として成立しました。イベリア半島などが措定された「半周辺」は、両者の中間的な役割を果たします。
<16世紀>
・西ヨーロッパが「中核」
・イベリア半島などが「半周辺」
・東ヨーロッパとラテンアメリカが「周辺」
「中核」は、システム全体の経済的剰余の多くを受け取り、「周辺」はその対極にあり、経済的に搾取される構造にあります。
ここでいう分業とは、単に機能的な分業、つまり職種に関するそれだけではなく、地理的な分業をも含んでいる。経済的な役割は、世界システムの全域で均質ではありません。
このような地理的偏在が生じる一つの理由は、生態学的な条件が地域によって違っていることからできています。
しかし、もっと大きな理由は、地域によってそれぞれに固有の社会的労働の組織が成立したことにあります。
つまり、システムの内部で特定の集団が他人の労働を搾取する、つまり剰余の受け取り分を拡大する能力を強め、それを正当化するための組織が生まれるのだが、その差が経済上の役割の地域差をもたらすのである
壮大な分業体制であるこのシステムが展開すればするほど、中核では開発がすすみ、工業化が進展するが、周辺は逆に安価な原材料や食料の生産に特化させられ、低開発が進行します。
中核では、「自由な」賃金労働が主体となり、主権国家が強化されますが、
後者では、奴隷制度や農奴制度のようなある種の強制労働が一般化します。
国家機構は溶融し、植民地ないし半植民地状態となる。このシステムの本質は世界資本主義であるので、そこには資本の本質的な性格である、マルクスのいう「飽くなき自己増殖欲」が顕著にみられるでしょう。
その結果、このシステムは、以後地球上のさまざまな外縁部を呑み込み、20世紀初頭までには、地球のほぼ全域を呑み込むことになります。
歴史的な世界システム論の立場変化
「中核」「半周辺」「周辺」の対象となる地域は時代と共に変化する
ウォーラステインが述べるように、近代世界システムによって地域ごとの経済的格差が起こっている背景として、「中核」「半周辺」「周辺」という資本主義的分業体制が固有の地域の中で確立されているのではなく、世界を舞台に地域を超えて成立されている事実があるのです。
つまり、中核は時代を追うごとにヨーロッパ→アメリカ→中国へと変化していきます。
アフリカがヨーロッパ支配からアメリカの経済的搾取を受け、現在では中国による債務地獄に巻き込まれているのを見ると、この中核の立場が変更しているのがわかるかと思います。
さらに面白いのは、現在中核の性質を持ち始めた中国は、過去には「周辺」であったことです。日清戦争で負けた時、日本が「中核」的存在、中国は「周辺」的存在だったのは明確でしょう。
このように、1つの地域には、「外延部であった時代」「組み込みの時代」「周辺化の時代」という3つの時期があります。
「組み込み」は当該地域を世界経済の勢力圏に繋ぎ止め、もはや逃げられないようにする「鍵で固める」ことを意味するのに対し、「周辺化」はこの地域のミニ構造の絶え間ない変化を含む、資本主義的発展の深化です。
「組み込み」は、ある地域における何か重要な生産過程が、資本主義的世界経済の分業体制を構成する商品連鎖の一環として不可欠になることを意味します。
そして、ある地域の企業が世界経済と連動化し始めると大規模化が必須になります。
まとめ・問題提起
周辺国から中核となる地域が増加してきたとき、アフリカ以外に搾取対象がなくなった時に何が起こるのでしょうか?
組み込みの対象地域がなくなり、搾取していく対象がなくなった時に、グローバルな資本主義の終焉がくるのでしょうか?
他の記事では、より詳しく世界システム論か見るアフリカについて解説していこうと思います。